みなさんこんにちは!前々回から離人感・現実感消失を中心に、関連するトピックを詳しく見ています。第1回は当事者の方へのアンケートから見えた症状の実態を、第2回はDIDやその他の解離症状との関連をそれぞれ紹介しました。
当事者の方へ実施したこちらのアンケートの問3(「その他、もし離人感や現実感消失について知りたいこと、記事で扱ってほしいことなどがありましたら教えてください。」)では、
- もっと現実感消失や離人感のことが周知されて欲しい。私はトラウマなく発生して慢性化しているので、トラウマ関係なく発症する例も扱って欲しい。
- 不思議の国のアリス症候群は離人感のひとつでしょうか。
- 離人感と他の疾患との関係。
といった、非トラウマ関連の離人感・現実感消失に関する声も複数件寄せられました。
そこで第3回の今回は、「不思議の国のアリス症候群」と離人感・現実感消失の関連について見ていきたいと思います。
そもそも離人感・現実感消失とは?という方はこちらからどうぞ!⬇️
目次
不思議の国のアリス症候群(AIWS)とは?



(a)体全体が大きくなるアリス (b)首だけが長くなるアリス (c)体全体が小さくなるアリス
全てWikipedia Commonsから引用(Public Domain)
不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland Syndrome; AIWS)は、児童小説『不思議の国のアリス』で主人公・アリスが体験する不可思議な感覚にちなんで名づけられた、視知覚、ボディスキーマ、時間感覚の歪みを特徴とする知覚の障害1です。
1955年にJohn Toddが特定の症状群をこのように命名したのが始まりで、このとき含まれたのは
- 離人感・現実感消失
- ボディスキーマの異常
- 身体と心が分離する感覚
- 物の大きさ・距離・位置の錯覚(例:小さく見える、大きく見えるなど)
- 浮遊感
- 時間感覚の歪み(時間が遅く感じる、速く感じるなど)
などの症状でした2。
ボディスキーマとは、身体のさまざまな部位がどこに・どのように位置していて、それらが空間や時間の中でどのように動いているか、身体がきちんと機能しているかなどを知覚する感覚3のことで、この感覚が障害されると、上の挿絵のように身体のサイズが歪んで感じられるといった独特の症状につながることがあります4。
前々回の記事でまとめた「離人感・現実感消失」に関する当事者アンケートの結果では、「体の位置やサイズがわからなくなる」「手や足が丸太や木の枝になったような感じ」といったボディスキーマの歪みと解釈できるような症状から、「視界の色味が変になる」「水槽の中から見ているように感じる」といった視知覚の歪み、「時間の流れがゆっくりになる」といった時間感覚の歪みまで、不思議の国のアリス症候群と重なる病態が多く報告されました。


当事者アンケートの簡易的なまとめ
つまり、トラウマから生じる離人感・現実感消失と、トラウマ以外の原因により生じる不思議の国のアリス症候群の間にはいくつかの共通点があり、不思議の国のアリス症候群のメカニズムや病態を知ることで、トラウマ関連の症状に関する理解も深められる可能性が高いと考えられます。
今のところDSMやICDなどの国際的な診断枠組みには含まれていない不思議の国のアリス症候群ですが5、関連した研究や調査、報告は複数行われていて、そのメカニズムや実態など、明らかになっている点もいくつかあります。今回は離人感・現実感消失との関係性にも触れながら、この病気の概要を見ていきましょう。
症状
不思議の国のアリス症候群の症状は、42の視覚的症状と16の体性感覚的・非視覚的症状に分類されています6。
42の視覚的症状(クリックで展開)
| 名称 | 症状 | 報告数 (169件中) |
| Achromatopsia | 色を知覚する能力がない、または著しく低下している状態 | 9 |
| Akinetopsia | 動きを知覚できない | — |
| Arugopsia | しわのある表面が滑らかに見える | 1 |
| Chloropsia | すべてが緑色に見える | — |
| Chromatopsia | 一つの色調で物が見える(例:緑視、青視、赤視、紫視、黄視) | 1 |
| Corona phenomenon | 物体の周りに余分な輪郭が見える | — |
| Cyanopsia | すべてが青く見える | — |
| Dyschromatopsia | 色の混同や区別困難 | 3 |
| Dysmegalopsia | 物の大きさを正しく認識できない | — |
| Dysmetropsia | 物の大きさや距離の見え方が変わる | — |
| Dysmorphopsia | 線や輪郭が波打って見える | 34 |
| Dysplatopsia | 物体が平たく、引き伸ばされて見える | — |
| Enhanced stereoscopic vision | 奥行きや細部が強調されすぎて見える | 2 |
| Entomopia | 昆虫の目で見たように、多数の像が見える | — |
| Erythropsia | すべてが赤く見える | 3 |
| Gyropsia | 幻の回転運動が見える | — |
| Hemimetamorphopsia | 物体の片側のみが歪んで見える | — |
| Hyperchromatopsia | 色が異常に鮮やかに見える | 4 |
| Ianothinopsia | 紫色に見える | 1 |
| Illusory splitting | 物体が縦に分裂して見える幻覚 | 1 |
| Illusory visual spread | 物体が広がって見える | — |
| Inverted vision | 物体が(通常は90°か180°)回転して見える | 1 |
| Kinetopsia | 静止している物体が動いて見える | 15 |
| Loss of stereoscopic vision | 物体が平面的に(2次元的に)見える | — |
| Macroproxiopia | 物体が実際より大きく、近くに見える | 2 |
| Macropsia | 物体が実際より大きく見える | 76 |
| Micropsia | 物体が実際より小さく見える | 99 |
| Microtelepsia | 物体が実際より小さく、遠くに見える | 7 |
| Monocular metamorphopsia | 片目だけで見える歪み | — |
| Mosaic vision | 見える物体がモザイク状に断片化されて見える | — |
| Palinopsia | 物が移動したあとにも幻覚的に残って見える(polyopia;一つの物体が複数に分かれて見える、trailing;動く物体の後ろに残像のように像が残る、などを含む) | 3 |
| Pelopsia | 物体が実際より近くに見える | 11 |
| Plagiopsia | 物体が傾いて見える | — |
| Polyopia | 一つの物体が複数に分かれて見える | 1 |
| Porropsia | 静止している物体が遠ざかっていくように見える | 3 |
| Prosopometamorphopsia | 顔が歪んで見える | 3 |
| Teleopsia | 物体が実際より遠くに見える | 39 |
| Trailing phenomenon | 動く物体の後ろに残像のように像が残る | — |
| Visual allachesthesia | 物体が反対側の視野にあるように見える | 4 |
| Visual perseveration | 物体が焦点から外れても視覚的に残り続ける | — |
| Xanthopsia | すべてが黄色に見える | — |
| Zoom vision | 巨大視と微小視、または巨大近接視と小遠視の間で見え方が変化する | 4 |
16の体性感覚的・非視覚的症状(クリックで展開)
| 名称 | 症状 | 報告数 (169件中) |
| Aschematia | 体の一部が占める空間の表象が不十分 | 1 |
| Depersonalization | 自分自身を非現実的に感じる(離人感) | 7 |
| Derealization | 世界を非現実的に感じる(現実感消失) | 17 |
| Hyperschematia | 体の一部が占める空間の表象が過剰 | 1 |
| Hyposchematia | 体の一部が占める空間の表象が過少 | — |
| Illusory feeling of levitation | 空中を浮かんでいるような感覚 | 4 |
| Palisomesthesia | 体性感覚の錯覚的な再出現 | — |
| Paraschematia | 体の一部が占める空間の不適切な表象 | — |
| Partial macrosomatognosia | 体の一部が実際より大きく感じられる | 12 |
| Partial microsomatognosia | 体の一部が実際より小さく感じられる | 13 |
| Protracted duration | 心理的時間の進行が遅く感じられる | 6 |
| Quick-motion phenomenon | 心理的時間の進行が速く感じられる | 22 |
| Splitting of the body image | 自分の体が縦に2つに分かれているように感じる | 1 |
| Time distortion | 心理的時間の知覚が歪む | 3 |
| Total-body macrosomatognosia | 全身が実際より大きく感じられる | 15 |
| Total-body microsomatognosia | 全身が実際より小さく感じられる | 14 |



症状の持続時間自体は、基本的には数分から数日と短めな傾向にありますが、ときには数年、あるいは生涯にわたって続くこともあるようです7。
かなり多彩な症状群ですが、これらは全て幻覚や錯覚ではなく、感覚知覚的歪みに分類されることが特徴です8。
実は、幻覚・錯覚・歪みには、それぞれ次のような違いがあります。
・幻覚(hallucination)9
外界からの適切な刺激がないにもかかわらず経験される知覚。例えば、誰もしゃべっていないのに声が聞こえたり、何もいないのに猫が見えたりするなど。
・錯覚(illusion)10
外界にそのもととなる刺激はあるものの、誤って知覚されたり、誤って解釈されたりした状態。例えば、通り過ぎる車の騒音の中に音楽が聞こえるように感じたり、風で揺れるカーテンを侵入者と見間違えたりするなど。
・歪み(distortion)11
感覚的な印象をもとにはしているものの、その中の特定の部分が特別に変化したもの。例えば、線や輪郭が波打って見えたり(=dysmorphopsia)、物体が傾いて見えたり(=plagiopsia)、止まっている物体が動いて見えたり(=kinetopsia)、顔が歪んで見えたり(=prosopometamorphopsia)するなど。不思議の国のアリス症候群の症状はこれにあてはまる。
つまり、統合失調症や薬物使用で起こる幻覚のように「何か実在しないものが見えたり聞こえたりする現象」や、トラウマ記憶が引き起こすフラッシュバックのように「平凡な刺激が恐ろしい被害記憶の影を感じさせるトリガーとなる現象」など、視覚に異変が生じる症状はもちろんたくさんありますが、そうしたものと不思議の国のアリス症候群で見られる「歪み」とは、本質的な性質が異なるということですね12。
それでは一体、どんな人がこうした「歪み」の症状を経験しやすいのでしょうか?
不思議の国のアリス症候群を体験しやすい人
性別・年齢・併存疾患
今回参考にしたレビュー論文によると、患者層は以下の通りでした13。
- 162人中55.6%が男性、44.4%が女性。
- 患者166人の平均年齢は15.5歳。
- そのうち132人が18歳以下で、18歳以下の患者の平均年齢は9歳。
男性が若干多いですが、目立つほどの男女差はありませんね。平均年齢は意外と低く、患者のボリュームゾーンは若年層であることがわかります。
原因や併存疾患としては、
- 若年層では脳炎との併発が最も多い(成人・高齢者では1.2%だが若年層では21.7%)。
- 成人・高齢者層では神経疾患(外傷性脳症、片頭痛、てんかんなど)との併発が最も多い(16.8%)。なかでも片頭痛が最も有病率の高い症状(9.6%)。
- 166の症例のうち、精神疾患との併発は6件(3.6%)で、中でも離人感・現実感消失症は1件(0.6%)だった14。
とのことでした15。いずれも脳に影響を及ぼす疾患が多く併存していることから、不思議の国のアリス症候群は脳機能の異常と密接に関連していると考えられそうです。
予後に関して、症状が完全に消え去ったケース(完全寛解)は全体の46.7%、部分的または一時的に寛解したケースは全体の11.3%でしたが、てんかんや片頭痛のような慢性症状では完全寛解の報告は稀でした16。片頭痛患者を対象とした他の臨床研究では、不思議の国のアリス症候群の有病率は、片頭痛患者の約15%に達する可能性があることも示唆されています17。
片頭痛との関連性
一般的には離人感や現実感消失よりも身近に感じられる片頭痛ですが、こんなにも不思議の国のアリス症候群と関連性があるとは驚きですね。そもそも、片頭痛はいったいどんな症状なのでしょうか?
片頭痛は通常、頭のどちらか片側がズキズキする、数時間から数日にかけて徐々に進行していくタイプの頭痛です18。中でも患者の約25%は、「オーラ(aura)」や「前兆」と呼ばれる視覚的・聴覚的・運動的・体性感覚的な症状を、頭痛の前、あるいは頭痛中に経験することがわかっています19。
『不思議の国のアリス』の作者であるLewis Carroll自身も片頭痛に苦しんでいたことが知られており、彼の日記には発作の前に体験したオーラ現象が綴られているそうです。アリスが体験する身体の変化は、こうした作者自身のボディスキーマの異常に着想を得た可能性があると指摘する声もあります20。
メカニズム
さて、ここまで不思議の国のアリス症候群の概要について見てきましたが、それでは一体、どのようにしてこうした症状は引き起こされるのでしょうか。また、片頭痛や離人感・現実感消失とどのようなメカニズム的関連があるのでしょう?
基本的に、不思議の国のアリス症候群の症状は、知覚システムの機能的・構造的な異常に起因するとされています21。特に中枢神経系の病変が最も一般的な原因として考えられていて、それぞれの症状に対し、特定の部位の異常が特定されているものもあります。
視覚的歪み
たとえば、42の視覚的症状のうち、achromatopsia(色を知覚する能力が失われた、あるいは低下した状態)では大脳皮質のV4領域が、akinetopsia(動きを知覚できない状態)ではV5領域が、それぞれ両側性の機能喪失を起こしていることが判明しています22。
大脳皮質のV1領域からV5領域は視覚処理を行う脳の部位で、中でもV4領域は色に、V5領域は動きに選択的に反応します。つまり、これらの部位の機能がそれぞれ失われたり低下したりすることで、「色がわからない(achromatopsia)」「動きが知覚できない(akinetopsia)」といった視覚的歪みが生じるということですね。
ただし、たとえばdysmorphopsia(線や輪郭が波打って見える症状)は網膜切除やその他の眼疾患でも、またplagiopsia(物体が傾いて見える症状)は内耳疾患でもそれぞれ見られるように、すべての視覚的歪みが中枢神経系の病変により生じるわけではないのもまた事実です23。
また、視覚ネットワーク全体の中で、より高次の要素同士がうまく一致しないことで起こるとされる症状もあります。たとえば、prosopometamorphopsiaは「人の顔が一貫して動物の顔のように見える」ことがある複雑なタイプの視覚的歪みですが、この症状はネットワークの連携がうまく取れないことが原因とされています。 さらに、比較的単純な症状と思われるmicropsia(物が小さく見える症状)でも、後頭葉の活動低下と頭頂葉の活動増加という一貫したパターンが見られることが報告されています24。
顔認識の障害
視覚的歪みの中でも、特に顔認識に関する症状には脳の複雑なネットワークが関与していて、後頭部顔領域 (Occipital Face Area) や紡錘状回顔領域 (Fusiform Face Area) がその中心を担っていることがわかっています25。これらの部位は視覚野に含まれていて、頭の後方に位置しています。
不思議の国のアリス症候群だけでなく、片頭痛患者でも他人の顔を識別しづらくなる例は複数報告されています26。これに関連した研究では、顔認識に関する脳の反応を片頭痛群(オーラ有り・無し)と健康な対照群で比較したところ、片頭痛群において視覚皮質が過剰に興奮していることが明らかとなりました27。
過去の記事でも、離人症の患者で頭頂後頭領域での高い代謝活動が生じていることを紹介しましたが、こうした視覚野(後頭葉)の異常な活動増加は、顔認識の困難をはじめとする複雑な視覚的歪みと密接に関連している可能性がありそうです。
体性感覚の歪み
非視覚的な体性感覚の歪みも、視覚的な歪みと同様のメカニズムで、体性感覚システムの機能的・構造的な異常により引き起こされるとされています。特に体性感覚の歪みでは、頭頂-側頭-後頭部の接合部周辺に位置するネットワークの一部が関与していることが指摘されています28。
例えば、右側の後部側頭頭頂接合部(pTPJ)は視点転換や身体的な想像に関わる部位で、ここを操作すると、「他者の視点を自分の身体になぞらえて想像する」能力が変化することが報告されています29。
この「視点転換」というのは自己中心視点と他者中心視点を切り替える能力のことで、例えば次のような例で説明することができます。
観察者が、テーブルの上に、コーヒーカップと雑誌が置いてあるのを見ている光景を思い浮かべた場合、自己中心視点から記述すると、「右前方1メートルのところにコーヒーカップがあり、左前方のほぼ同じ距離に雑誌が置いてある」と説明できる。一方で、他者中心視点 (環境中心視点)から記述すると、「テーブルの上に2つの物体があり、テーブルの中心より右側にコーヒーカップがあり、中心より左側に雑誌がある」と説明できる。
ー視点転換 – 脳科学辞典より引用
つまり、右側のpTPJはこうした二つの視点から空間を捉える能力に関わっており、この部位をはじめとするネットワークの連携が乱れることで、その能力、すなわち視点転換が妨害される可能性があるということですね。
また、自分の体がもう一つ存在しているかのように見える感覚(自己像幻視、体外離脱体験など)も、右側の側頭頭頂皮質に関連していることが示唆されています30。
例えば片頭痛患者では、右側の側頭頭頂接合部(TPJ)の活動低下が慢性的に見られるうえ、注意のシフトを必要とする視空間課題の成績も劣る傾向があることがわかっています31。
片頭痛と併発することの多い不思議の国のアリス症候群では、主観的に身体が大きくなったり小さくなったり感じられるタイプの歪みに加え、離人感や現実感消失なども体験されますが、前者には視点転換の妨害などに関わる右側pTPJの活動低下が、後者には自己像幻視や体外離脱体験などに関わる右側TPJの活動低下が、それぞれ関与している可能性がありそうです。
以前のトラウマ記憶に関する記事で、トラウマ的な場面では、場面を異なる空間的視点から心的に捉える「アロセントリック処理」が妨害されやすく、経験した視点から場面を想起する「エゴセントリック処理」が優先されやすくなることを紹介しましたが、これも視点転換の文脈で考えてみると、適切な視点転換の処理が行われていない状態がトラウマ記憶における「エゴセントリック処理」につながっていると考えることが出来そうですね。トラウマ由来の離人感・現実感消失は、もしかしたらこうしたメカニズムにより、不思議の国のアリス症候群における体性感覚の歪みに似た症状を引き起こしている可能性があるのかもしれません。
また、視覚的解離症状に関するこちらの記事では、側頭葉と後頭葉をつなぐ下縦束の右側が損傷を受けると視覚ー辺縁系の切断症候群が起き、離人感・現実感消失に類似した視覚的低感情性や空間的記憶障害、相貌失認(人々の顔を判別できない症状)が起こること、また、自己認識や親近感の特定、自己と他者の区別の評価などを含む知覚処理が右半球において優位であることを紹介しましたが、これらの知見も、今回の不思議の国のアリス症候群を引き起こすメカニズムと重なる部分が大いにあります。
離人感・現実感消失に関する研究では、後頭部(視覚野)の活性化や扁桃体の活動低下などが、現在明らかになっている主なメカニズムとされることが多いですが、類似症状(不思議の国のアリス症候群や視覚ー辺縁系の切断症状など)で、いずれにおいても右側に病変が起きていること、後頭葉での活動が増加したり、頭頂-側頭-後頭部の接合部周辺に位置するネットワークで連携がうまく取れていなかったりすることを考えると、今後、トラウマ由来の離人感・現実感消失に関しても、さらに詳細な神経科学的基盤が明らかになるかもしれません。
おわりに
今回は、非トラウマ由来の離人感・現実感消失に関連して、不思議の国のアリス症候群を詳しく見てきました。
珍しい名前の病気ですが、片頭痛との関連性など、意外にも身近な存在でびっくりしたのではないでしょうか。トラウマ由来の離人感や現実感消失との関連性も、主にメカニズムの面から今まで紹介した知見とつながる部分があり、とても興味深く感じました。
次回は、離人感・現実感消失における機能障害やNSSI(非自殺性自傷)について見ていきたいと思います。
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<2025/6/5追記>
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本記事の参考文献・サイト
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- Sattin, D., Parma, C., Lunetta, C., Zulueta, A., Lanzone, J., Giani, L., Vassallo, M., Picozzi, M., & Parati, E. A. (2023). An Overview of the Body Schema and Body Image: Theoretical Models, Methodological Settings and Pitfalls for Rehabilitation of Persons with Neurological Disorders. Brain sciences, 13(10), 1410.
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- Blom, J. D. (2016) pp.262-263 ↩︎
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- Blom, J. D. (2016) p.265 ↩︎
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- Migraine With Aura – StatPearls – NCBI Bookshelf (2025/4/17閲覧) ↩︎
- Blom, J. D. (2016) p.263 ↩︎
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- Blom, J. D. (2016) p.266 ↩︎
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- Hadjikhani, N., & Vincent, M. (2021) p.5 ↩︎
- Hadjikhani, N., & Vincent, M. (2021) p.3 ↩︎
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- Sattin, D., et al. (2023) p.18 ↩︎
- Sattin, D., et al. (2023) p.19 ↩︎
- Hadjikhani, N., & Vincent, M. (2021) p.5 ↩︎

